2018年11月6日火曜日

ベイズ推論とガウス過程

はじめに


 ベイズ推論とガウス過程の関係を、回帰を例に取り確認する。

ベイズ線形回帰


 まず最初にベイズ推論を用いて線形回帰を考察する。いま観測値$X$と$Y$が与えられているとする。 \begin{eqnarray} X&=&\{x_1,\cdots,x_N\},x_n\in \mathbb{R}^M \\ Y&=&\{y_1,\cdots,y_N\},\;y_n\in\mathbb{R} \end{eqnarray} このとき次の尤度を考える。 \begin{equation} p(y_n|x_n,w)=\mathcal{N}(y_n|w^T\phi(x_n),\beta^{-1}) \end{equation} ここで、$\mathcal{N}(y_n|\mu,\sigma^2)$は平均$\mu$、分散$\sigma^2$の正規分布を表す。$w$はパラメータ($w\in\mathbb{R}^D$)、$\phi(\cdot)$は$M$次元空間内の点を$D$次元空間内の点に射影する関数である。次に、$w$の事前分布を次のように導入する。 \begin{equation} p(w)=\mathcal{N}(w|0,\alpha^{-1}I_D) \end{equation} $I_D$は$D\times D$の単位行列である。このとき事後分布$p(w|X,Y)$は厳密に計算でき \begin{eqnarray} p(w|X,Y)&=&\mathcal{N}(w|m,S) \\ m&=&S\beta\Phi^Ty \in \mathbb{R}^D\\ S&=&(\alpha I_D+\beta\Phi^T\Phi)^{-1} \in \mathbb{R}^{D\times D} \end{eqnarray} を得る。$y=(y_1,\dots,y_N)^T$、$\Phi$は$\Phi_{nd}=\phi_d(x_n)$を成分に持つ$N\times D$行列である。さらに、この事後分布から予測分布を求めることができる。 \begin{eqnarray} p(y_{*}|x_{*},X,Y)&=&\mathcal{N}(y_{*}|m^T\phi(x_*),\sigma^2(x_*)) \label{eq1}\\ \sigma^2(x_*)&=&\beta^{-1}+\phi^T(x_*)S\phi(x_*) \end{eqnarray} 以上が、ベイズ推論による線形回帰の結果である。

ガウス過程による回帰


 いま観測値$X$と$Y$が与えられているとする。 \begin{eqnarray} X&=&\{x_1,\cdots,x_N\},x_n\in \mathbb{R}^M \\ Y&=&\{y_1,\cdots,y_N\},\;y_n\in\mathbb{R} \end{eqnarray} 観測値$X$と$Y$の間には次の関係があるとする。 \begin{equation} y_n=z(x_n)+\epsilon_n \end{equation} $\epsilon_n$が正規分布に従うノイズであれば次の尤度を考えることができる。 \begin{equation} p(y_n|z_n)=\mathcal{N}(y_n|z_n,\beta^{-1}) \end{equation} ただし、$z_n=z(x_n)$とした。観測値は独立同分布から生成されると仮定すれば次式を得る。 \begin{eqnarray} p(y|z) &=&p(y_1,\dots,y_N|z_1,\cdots,z_N) \\ &=&\prod_{n=1}^N p(y_n|z_n) \\ &=&\prod_{n=1}^N \mathcal{N}(y_n|z_n,\beta^{-1}) \\ &=&\mathcal{N}(y|z,\beta^{-1}I_N) \end{eqnarray} ただし、$y=(y_1,\dots,y_N)^T$、$z=(z_1,\dots,z_N)^T$と置いた。$I_N$は$N\times N$の単位行列である。ここで、$z$がガウス過程から生成される量であると仮定すると、次の事前分布を使うことができる。 \begin{equation} p(z)=\mathcal{N}(z|0,K) \end{equation} 共分散行列$K$のサイズは$N\times N$であり、その成分は次式で定義される。 \begin{equation} K_{nm}=k(x_n,x_m) \end{equation} $k(x_n,x_m)$は2点から1つのスカラー量が決まる関数であり、カーネル関数と呼ばれる。これらを用いて、$p(y,z)$を$z$について周辺化する。 \begin{eqnarray} p(y)&=&\int dz\;p(y|z)\;p(z)\\ &=&\mathcal{N}(y|0,C) \end{eqnarray} $C$は$N\times N$の行列であり、その成分は次式で与えられる。 \begin{equation} C_{nm}=k(x_n,x_m)+\beta^{-1}\delta_{nm} \end{equation} 予測分布は次のようなる。 \begin{eqnarray} p(y_*|x_*,X,Y)&=&\mathcal{N}(y_*|m^{'}(x_*),\sigma^{'\;2}(x_*)) \label{eq2}\\ m^{'}(x_*)&=&k^TC^{-1}y \\ \sigma^{'\;2}(x_*)&=&c-k^TC^{-1}k \end{eqnarray} ただし \begin{eqnarray} k&=&(k(x_n,x_*),\cdots,k(x_N,x_*))^T \\ c&=&k(x_*,x_*)+\beta^{-1} \end{eqnarray} である。以上がガウス過程による回帰の結果である。

ベイズ推論とガウス過程の関係


 いま、カーネル関数が次式で定義されるとする。 \begin{equation} k(x_n,x_m)=\alpha^{-1}\phi^T(x_n)\phi(x_m) \end{equation} このとき、式(\ref{eq1})と(\ref{eq2})は等しくなる。

 ベイズ推論による解法では$D$次元空間を考えるが、ガウス過程による解法では$N$次元空間を考える。前者では$D\times D$行列の逆行列を、後者では$N\times N$行列の逆行列を計算する必要がある。それぞれの計算量は$\mathcal{O}(D^3)$と$\mathcal{O}(N^3)$である。$D\lt N$である場合、パラメータ空間で計算した方が計算量は少なくなる。ガウス過程を使う利点は、$K$として様々なカーネルを使うことができる点である。

ガウス過程のハイパーパラメータの決定


 いま共分散行列$K$がハイパーパラメータ$\theta$でモデル化されているとする。 \begin{equation} p(z|\theta)=\mathcal{N}(z|0,K_{\theta}) \end{equation} このとき \begin{eqnarray} p(y|\theta)&=&\int dz\;p(y|z)\;p(z|\theta)\\ &=&\mathcal{N}(y|0,C_{\theta}) \\ C_{\theta,nm}&=&K_{\theta,nm}+\beta^{-1}\delta_{nm} \end{eqnarray} が成り立つ。事前分布$p(\theta)$を考えると次式が成り立つ。 \begin{equation} p(\theta|y)=\frac{p(y|\theta)p(\theta)}{p(y)} \end{equation} 一般的に右辺分母は解析的に計算できないので、何らかの近似が必要になる。書籍「Pythonによるベイズ統計モデリング PyMCでのデータ分析実践ガイド」の第8章にPyMC3を用いた解法が掲載されている。

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